レバノンに対する渡航情報(危険情報)の発出(2006/07/14)
●南部国境地域(アル・マンスーリ市、カフラ市、フルン市リタニ川、
ハスバイヤ市南郊外を結ぶ線以南の地域)及び各地のパレスチナ難民キャンプ
:「渡航の延期をおすすめします。」
(退避手段等につきあらかじめ検討してください。)(継続)
●南レバノン県、ナバティエ県、ベカー県、バーブダ郡以南の山岳レバノン県
:「渡航の延期をおすすめします。」
(退避手段等につきあらかじめ検討してください。)(引き上げ)
●首都ベイルートを含む上記以外の地域
:「渡航の是非を検討してください。」(引き上げ)
こちらを参照ください(地図)
☆詳細については、下記の内容をよくお読みください。
1.概況
(1)レバノンには18の宗派が存在し、政治・治安情勢は各宗派のバランスの上に成り立っているため、国内の事情のみならず、周辺地域情勢の影響で事態が急変する可能性が排除できません。(2)南部国境地帯においては、これまでも停戦ラインを挟んでシーア派武装組織ヒズボラとイスラエル軍との間で散発的な軍事衝突が発生してきました。
2006年7月12日、ヒズボラは国境地帯でイスラエル軍と交戦し、イスラエル軍兵士2人を拘束し、イスラエルに拘束されているレバノン人、パレスチナ人等の被抑留者の解放を求めています。これに対しイスラエルは、ベイルート南郊外や南レバノン県、ナバティエ県で橋梁の破壊やヒズボラ関連施設の空爆を行いました。同13日には、イスラエル軍はベイルート市内のラフィーク・ハリーリ国際空港の滑走路を空爆しました。
イスラエルは今後も、主にレバノン国内のヒズボラに関係する施設などを対象に軍事行動を継続する可能性があります。また今般のイスラエルとの緊張を契機に、レバノン国内の政治・治安情勢が流動化する可能性も排除されません。(3)レバノンは、約40万人のパレスチナ難民を抱え、国内12か所にパレスチナ難民キャンプがあります。同キャンプにはレバノンの警察力が及んでいないため、パレスチナ武装組織の拠点や、レバノン人犯罪者の隠れ家となっているところもあります。またパレスチナ武装組織の多くは、ヒズボラと共闘関係にあります。最近では、パレスチナ武装組織の武装
解除問題に関連して、レバノン政府と一部のパレスチナ勢力との間で緊張が高まっていましたが、イスラエルや西岸・ガザ地区での情勢の影響を受け、さらに不安定化する可能性が排除されません。2.地域情勢
(1)南部国境地域を含む南レバノン県及びナバティエ県、ベカー県、バーブダ郡以南の山岳レバノン県並びに各地のパレスチナ難民キャンプ:「渡航の延期をおすすめします。」
(退避手段等につきあらかじめ検討してください。)
(イ)レバノン・イスラエル両国間には、停戦を監視し、紛争の未然防止のために南部国境地帯に国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の部隊が派遣されていますが、シーア派武装組織ヒズボラとイスラエル軍との間で緊張状態が続いています。
ヒズボラは、シリアのゴラン高原に隣接する「シェバア農地」が占領されたままであるとしてその解放とイスラエルに抑留されているヒズボラ関係者の釈放を要求し、同農地を中心に、散発的にイスラエルに対する軍事行動を行ってきました。これに対しイスラエルは、ヒズボラがイスラエル軍兵士の誘拐作戦を実行しているとして、厳しく反撃してきました。
2006年7月12日、ヒズボラは国境地帯でイスラエル軍と交戦し、イスラエル軍兵士2人を拘束し、イスラエルに拘束されているレバノン人、パレスチナ人等の被抑留者の解放を求めています。これに対しイスラエルは、拘束されたイスラエル軍兵士救出のため、約6年振りにレバノン領内に地上軍を侵攻させたほか、南レバノン県、ナバティエ県、ベカー県で橋梁の破壊やヒズボラ関連施設の空爆を行いました。これらに対し、ヒズボラも反撃を試みています。
イスラエルは、拘束された兵士が釈放されるまで軍事行動を継続することを明らかにしており、事態収拾の目処は立っていません。
(ロ)パレスチナ武装勢力の多くは、対イスラエル関係という点でヒズボラと共闘関係にあるため、その施設等はイスラエルの軍事行動の対象となる可能性があります。 またパレスチナ難民キャンプは、パレスチナ情勢の影響を受けやすく、パレスチナやイスラエルで大きな事件があった際には、同キャンプでも大規模な集会やデモが行われています。しかし、レバノンの警察力はパレスチナ難民キャンプに及んでおらず、パレスチナ難民キャンプ内には武器が大量に出回っていることから、パレスチナ組織間や住民の間で発砲事件が散発しており、突発的な状況の悪化が、同キャンプ内の治安に影響を及ぼすこともあります。レバノン政府は、ベカー県等にあるパレスチナ武装組織の軍事キャンプを撤去させる方針を明らかにしており、今後、これら軍事キャンプの扱いを契機として、難民キャンプ周辺でも緊張が高まるおそれがあります。
このように、パレスチナ難民キャンプやその周辺では、不測の事態に巻き込まれる可能性が高く、さらに、同キャンプにはレバノンの警察力が及んでいないため、仮に外国人旅行者等が犯罪や事故に遭った場合でも、レバノン政府に救助を求めることは非常に困難です。(ハ)特に、南レバノン県サイダ市近郊にあるレバノン最大のアイン・ヘルワ難民キャンプには、ファタハを始めとするパレスチナ武装諸組織に加え、国際テロ組織アル・カーイダと関係があるとされ、米国から
テロ組織指定を受けているイスラム過激組織ウスバト・アル・アンサールが存在し、レバノン人の一般犯罪者も多数潜伏していると言われています。つきましては、特にヒズボラに関係する施設が多く散在する南部国境地域を含む南レバノン県及びナバティエ県、ベカー県、バーブダ郡以南の山岳レバノン県への渡航並びに各パレスチナ難民キャンプへの
立入りを予定されている方は、どのような目的であれ渡航を延期するようおすすめします。既に同地域内に滞在中の方は、イスラエルの軍事行動やパレスチナ情勢の推移に十分な注意を払うとともに、退避等
の手段につきあらかじめ検討してください。また、これにも拘わらず、やむを得ない理由で同地域に渡航される方は、上記の情勢に留意するとともに、最新の関連情報を収集した上で、退避手段等を確保し
ておくようおすすめします。(2)首都ベイルートを含む上記以外の地域
:「渡航の是非を検討してください。」
(イ)レバノンには多数の宗派の国民が混在して住んでいるところも多くあり、上記以外の地域もイスラエルの軍事行動の対象となる可能性があります。2006年7月13日、イスラエル軍は南部国境地域への空爆に続き、首都ベイルートにあるレバノン唯一のラフィーク・ハリーリ国際空港の滑走路を空爆し、この結果、同空港は閉鎖されました。また、同軍はベイルート南郊外のヒズボラ系テレビ局関連施設の空爆も行っています。
加えて、首都ベイルートやその郊外では、過去に政治家、ジャーナリストの暗殺、商工業施設に対する爆弾テロ事件が連続して発生しており、これらテロ事件の実行犯らは未だ逮捕されていないこと等か
ら、情勢の展開によっては、再びこのようなテロ事件が発生する可能性は排除されません。
(ロ)レバノンには、ヒズボラやパレスチナ武装組織など、レバノン国軍以外の武装組織が存在しており、2004年10月に採択された国連安保理決議1559は、これら組織の武装解除を求めています。レバノン政府
は、国民対話により同問題を解決しようとしていますが、先行きは不透明です。
(ハ)レバノン政府は、行財政改革に取り組む姿勢を明らかにしています
が、この改革の行方次第では、政府と既得権益を失う政治勢力の激しい対立が起こる可能性があります。
(ニ)レバノンで活動しているハリーリ元首相暗殺に関する国連国際独立調査委員会(UNIIIC)は、当初の予定を延長して2006年6月まで活動する予定です。レバノン政治勢力や一般国民は、この調査の行方に大
きな関心を持っており、2005年10月に同委員会が中間報告を発表した際にも、レバノン政府は不測の事態に備えるとして、市内各所に国軍や警察を展開し、厳重な警戒態勢を敷くなど、今後とも同元首相暗殺
事件の調査の進展が、レバノン国内で緊張状態を生む要因となる可能性があります。つきましては、上記(1)以外の地域に渡航・滞在を予定されている方は、渡航の是非を含め自らの安全につき真剣に検討してください。 また、既に滞在されている方については、最新の治安情報の入手に努め、十分な安全対策を講じるようおすすめします。
3.滞在にあたっての注意
滞在中は、下記の事項に十分留意して行動し、自ら危険を避けるようにしてください。また、外務省、在レバノン日本国大使館及び現地関係機関等より最新情報を入手するように努めてください。(1)渡航者全般向けの注意事項
(イ)レバノン滞在中は、報道等を通じてイスラエルの軍事活動や国内政治情勢、これらに密接に関係しているパレスチナ情勢、シリア情勢などを注視しつつ、治安情勢の推移に十分留意してください。
(ロ)ヒズボラやヒズボラと親しい関係にあるパレスチナ武装組織の関連
施設がイスラエルの軍事行動の対象となる可能性がありますので、軍事拠点や送電施設等のインフラ施設など標的となり得る場所には近づかないでください。なお、イスラム教シーア派住民が多数居住する地
域には、ヒズボラの関係施設があります。(ハ)テロ事件等不測の事態に巻き込まれないよう最新の治安関連情報を入手してください。政府関連施設や公共施設、治安当局関連施設(警察、軍関連施設等)等テロ攻撃の標的となる可能性のある場所にはできる限り近づかないでください。また、これまでショッピングセンターや商店街等で爆弾テロが発生していることにも留意し、多数の人が集まる場所での滞在時間はできるだけ短くしてください。なお、爆弾テロに対する注意事項については、2005年10月19日付け広域情報「爆弾テロに関する注意事項」等を参照してください。
(ニ)人が多く集まる場所やしばしば大規模なデモや集会が行われる場所
(首都ベイルート市内では、ダウン・タウン地区の殉教者広場、首相府、国連ESCWAビル周辺、政府機関・各国大使館、国立博物館、主要大学周辺、低所得者居住地区等)を訪問する際には、衝突等の不測の事態を避けるため、周囲の状況に注意してください。
(ホ)外出中に不測の事態が起きた場合は、可能であれば自宅、職場又は滞在中のホテル等の連絡手段を確保しやすい場所に速やかに戻るとともに、関連情報の収集に努め、事態沈静化まで待機するなど、不要不
急の外出を避けてください。
(ヘ)ベイルート市内では、都市再開発による復興が進みつつある一方、依然として過去の内戦で崩れかけたまま放置されている建造物も多くあることから、建造物への出入りを避けることはもちろん、付近を通行する際は、落下物に注意してください。
(ト)慶事等の際の祝砲や、発砲事件に巻き込まれて死傷する事例が散見されることから、銃声を聞いたり、周辺の人が建物に避難するような場合には、至近の建物内に避難してください。(チ)地雷埋設表示がある場所はもとより、観光施設、道路及び居住地等から離れた山林、野原等には絶対に立ち入らないでください。また、不審な金属物等には近づかないでください。
(2)観光旅行者向けの注意事項
(イ)可能な限り複数で行動し、また、デモや集会に興味本位で近づかないようにしてください。
(ロ)観光地では特に車上荒らし及び置き引きなどに対し、細心の注意を払うようにしてください。別途掲載されている<安全対策基礎データ>を参照の上、犯罪に巻き込まれないよう十分留意してください。
(ハ)写真撮影に関しては、観光地での撮影は特に問題ありませんが、一部の観光地(トリポリ市内ライオン塔など)は、軍施設に隣接していることから、軍施設や兵士等に安易にカメラを向けないよう注意してください。さらに、軍、警察、ヒズボラ等の関係施設、政府関連施設、各宗派や政党の本部等の政治関連施設及びパレスチナ難民キャンプ等においては、無許可での撮影は行わないでください。
(ニ)旅券にイスラエルの査証や出入国スタンプが押されている場合、レバノン入国を拒否されますので注意してください。また、ヨルダン・イスラエル国境にあるヨルダン側検問所の出入国スタンプがある場合、実際にイスラエルに入国していなくても、イスラエルに出入国したと見なされ、入国を拒否される可能性もあります。(3)長期滞在者向けの注意事項
(イ)現地に3か月以上滞在される方は、緊急時の連絡等に必要ですので、到着後遅滞なく在レバノン日本国大使館に「在留届」を提出してください。また、届出事項に変更が生じたとき又はレバノンから去る(一時的な旅行を除く)ときは、その旨を届け出てください。
なお、在留届の届出は、郵送、ファックスの他、インターネット( http://www.ezairyu.mofa.go.jp/ )によっても行うことができます。
(ロ)外出の際には身の周りの安全に十分に注意してください。また、可能な限り単独での夜間の外出は控えるなど、犯罪に巻き込まれないよう注意してください。
(ハ)自宅や職場の周辺で不測の事態が起きた場合は、在レバノン日本国大使館に連絡を取り、事態が沈静化するまで外出は控える、現場から離れる等、身体の安全を第一に行動してください。
(ニ)やむを得ない事情により、「渡航の延期をおすすめします。」(退避手段等につきあらかじめ検討してください。)に相当する地域に滞在されている方は、平素から在レバノン日本国大使館と緊密に連絡を取ってください。また、不測の事態に備え、食料、飲料水を備蓄し、旅券、貴重品、衣類等をいつでも持ち出せるように準備しておくとともに、退避手段についても常時確認しておいてください。4.隣国のシリア、イスラエルに対しても、別途危険情報が発出されていますので、同情報の内容にも御留意ください。
(問い合わせ先)
○外務省領事局海外邦人安全課(テロ・誘拐に関する問い合わせは除く)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)5139
○外務省領事局邦人テロ対策室(テロ・誘拐に関する問い合わせ)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)3680
○外務省海外安全相談センター
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902
○外務省 海外安全ホームページ: http://www.mofa.go.jp/anzen/
○在レバノン日本国大使館
住所:Serail Hill Area, Army Street, Zokak El-Blat, Beirut,
Lebanon.(P.O. Box 3360)
電話: (961-1) 989751~3
FAX : (961-1) 989754
(c) Embassy of Japan in Lebanon
Serail Hill Area, Army St. Zokak El-Blat, Beirut, Lebanon