海外安全対策情報(平成24年度第4四半期)
1 治安情勢
シリアにおける軍事衝突が長期化する中、レバノンにおいてはアルサールを中心とした北ベカー地域並びにワーディー・ハーリドなど北部アッカール地域において、シリア軍の越境砲撃が昨年秋以降断続的に行われており、特に本年3月以降、右両地域のシリアとの国境付近は治安情勢が著しく悪化している。
レバノン国軍の展開により、国境からレバノン内陸部に向かって情勢悪化が拡大する事態は食い止められているが、レバノンの一部国内勢力は国連監視団の国境沿いへの展開を要請している。
また、シリア情勢悪化以前から散発的に銃撃戦が続いているトリポリ市のバーブ・タッバーネ地区(スンニ派住民居住地区)とジャバル・モフセン地区(アラウィ派住民居住地区)においては、レバノン国軍が展開し、衝突のエスカレートはかろうじて阻止されているが、しかし今後とも予断を許さない状況にある。
以上のほかは、レバノン全土は概して平穏であり、シリア難民の流入増に伴って生じている一般犯罪の増加並びに一部の富裕なレバノン人を狙った営利目的の誘拐、拘禁事件の続発を除けば、特段の治安情勢の悪化は認められない。特にレバノン南部では、イスラエル空軍機の領空侵犯は伝えられるが、UNIFIL、レバノン国軍のパトロールもあって、定住しはじめたシリア難民の増大にも拘わらず、レバノン国内では最も安全で平和な地域となっている
2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)邦人被害事案
3月31日午後2時30分ころ、 ベイルート市内の市街地路上において、邦人女性が前方からきた男に、携帯電話をひったくられる事件が発生した。被害者が周囲に助けを求めつつ逃走する犯人を追跡したところ、犯人は、付近の住民らに取り押さえられ警察に逮捕された。被害者に怪我はなく、奪われた携帯電話も無事取り戻された。
(2)犯罪発生状況
本年に入り、シリアから逃れてくる避難民の数が急増し一部の地域では不衛生や社会秩序を乱すなどの社会問題となっている。最近では、シリア人が関連(加害、被害共)する犯罪件数が増えており、日没後、検問所を設置し、見慣れない人に対する声かけ等により、犯行の未然防止を図る地域も出てきている。また、自動車窃盗の件数も増加している。盗難車両はシリアなどの国外に持ち出され、戦闘に利用されていると見られている。
3 テロ・爆弾事件発生状況
(1)1月10日午前3時頃、南レバノン県サラファンドにおいて酒類販売店に対する爆弾事件が発生した。本爆弾事件は、サイダとスールの中間に位置するサラファンドにおいて、幹線道路に面する10階建ビルの地上階にある酒類販売店で発生し、入り口ドア及び陳列された酒瓶等が破損したが人的被害は発生していない。
(2)1月28日夜、ベイルート南郊外ハイ・スッルムのアル・アッバース通りにおいて、ヒズボラ構成員所有の普通乗用車に仕掛けられた爆弾(TNT爆弾700グラム)が爆発した。仕掛けられた爆弾は小型の即製爆弾で、車両が損傷し爆発現場付近にガラス破片が飛散したものの人的被害はなかった。
(3)2月25日午後3時ころ、スールにおいて南部ヤラウンの村長が自動車を運転していたところ、運転席下に設置してあった時限式爆弾が爆発し重傷を負った。
4 誘拐・脅迫事件発生情報
レバノンでは、昨年から国内各地において身代金目的の誘拐事件が多発している。誘拐の対象となっているのは、主にレバノン人及びシリア人の富裕層であり、事前に誘拐対象の行動を十分監視した上で計画的に実行されたケースが多く見られる。
2月27日,スレイマン大統領を議長とする最高防衛評議会において、大統領は,誘拐犯グループを可及的速やかに,如何なる犠牲を払ってでも逮捕しなければならないと強調し、関係省庁、軍及び治安機関に対し講ずべき対策について指示を与えた。また、各政党及び宗派の指導者も誘拐事件を強く非難すると共に,国民に対し,誘拐犯逮捕に向け治安機関に協力するよう呼びかけている。
5 その他
国内で注目された様々な政治・社会問題を背景に、大統領府近郊、首相府前、仏大使館前等において抗議行動が行われている。ただし、抗議は概して整然としたデモ行進によってなされ、暴力沙汰には発展しない場合が多い。また、2月に実施された公務員の賃上げを求める抗議行動の影響により、国際空港の管制官によるストライキが行われ、一時的ではあるものの民間航空機の離発着に影響が出た。